大国と一流国
Civilizationというシミュレーションゲームは、世界中の国家を相手にした国盗りゲームですが、勝利の条件として、軍事力だけでなく、外交力や文化力でも勝利できる選択があります。ただ、私がゲームするときは、いつも軍事力のみで支配する選択で始めます。さて、世界の現実に目を向けると、はたして、外交力や文化力で世界を支配するなど、考えられますでしょうか? やはり軍事力は絶対条件です。有史以来、軍事力に勝る国が、他国を支配してきた歴史が繰り返されています。Civilizationの中でもそうですが、斧兵、ライフル兵、戦車、戦闘機と、革新的な軍事技術が開発されるたびに、それらが使われます。大航海時代が然り、第一次世界大戦が然り、そして第二次世界大戦も。ただし、ここでの話はシミュレーションゲームの話ではありません。
スペインと英国の大学研究チームが、24言語・3万2000問の独自データセットで8つのLLM(Large Language Model, 大規模言語モデル)、いわゆるAIツールを評価し、ChatGPTやClaudeなど6モデルで、日本が最頻参照国となった、とする論文を発表しました。論文のタイトルは、Why are all LLMs Obsessed with Japanese Culture? On the Hidden Cultural and Regional Biases of LLMsです。食文化、アニメ文化、伝統芸術などで、AIは日本を一番のひいきにしているということです。日本が東にある小さな島国だと思っていた、欧米の研究者には予想外の結果だったようです。国力としての文化力を数値化した初めての研究論文だったかもしれません。いまや、世界中のZ世代にとって、日本のアニメは生活の一部となっています。そんなアニメを見て育った外国人留学生が、私の研究室にも何名か留学に来ていました。日本に来た理由を聞けば、みんな日本のアニメが好きだからと答えていました。
宮崎駿や新開誠のアニメ映画を見て、映画に出てきた象徴的な場面の場所を、聖地として訪れる外国人観光客もたくさんいるようです。先日行った諏訪でも、諏訪湖を見るために来たと思われる外国人観光客がたくさんいました。「君の名は」に出てきた湖は琵琶湖がモデルでした。アニメを通して神道を知ったかどうか、神社を訪れる外国人観光客も急増しています。そして、食事で食べた、ラーメン、とんかつ、カレー、寿司の味、夜でも安全に出歩けて、ゴミなども落ちていない普通の町中、時間に正確で静かな車内の電車やバス、道を聞けば親切に教えてくれる人たち、これらは、日本人なら日頃ごく普通に経験している日常ですが、外国人には自国とのあまりの違いに、異質な別世界とまで感じてしまい、、帰国後に逆カルチャーショックを感じる、いわゆるジャパンロスに陥る人も増えているようです。
日本は明治以降、欧米の大国に肩を並べるため、富国強兵により国力を向上させ、軍事力を付けて、欧米の東アジア植民地化に引きずり込まれてしまい、結局、太平洋戦争で負けました。でも、その後、高度成長期の経済発展により、経済力で世界第2位にまで登りつめました。でも、1980年後半のバブル崩壊で、経済は低迷して、失われた30年と言われる長い年月を経て、今日に至っています。軍事力(防衛力)のみならず、経済力でも、もはや大国とは呼べません。そんな国が、いま文化力で世界を席巻しています。経済力で日本を越えた大国はいくつかあります。でも、はたして、それらの国々は大国ですが、いわゆる一流の国なのか、と考えた場合に、一流国になる指標は、軍事力と経済力だけで足りますでしょうか? 文化力も、一流国になるための必要不可欠な指標であると私は思いますが、いかがでしょう?
