AIとSDGs
日本の技術と聞くと、すでに日本は他国に追い越されてしまったと思う人も多いでしょう。みなさん、ここ10年くらい前から、持続可能な社会を実現するため、再生可能エネルギーを導入しなければならない、とか言われて、自宅に太陽光パネルを設置したり、EV車を新たに購入したりしている人もいるでしょう。 SDGsというキャッチフレーズで、どこの企業も、自社ではSDGsを推進していると宣伝しています(いました)。自宅でそれらを導入するのは自由ですから、それにコメントするつもりはありません。でも、最近各地を巡っていて、本当に残念に思うのは、日本の綺麗な景色の中に、異様な黒いパネルの集団が必ずと言っていいほど、紛れ込んで来るところです。太陽光パネルは液晶ディスプレイと同じく、もはや先端技術でもありません。
そんなSDGsですが、最近でもよく聞きますでしょうか? むしろ、最近はAIだのデータセンターだの、半導体だので、世界中が騒いでいませんか? 本当に持続可能な社会を実現したいのであれば、AIデータセンターはそれに、まさに逆行するものです。大量の記憶媒体が必要になり、それを稼働する大量の電力が必要になり、稼働に伴って発生する熱を冷却する装置も大量に必要になり、その装置を駆動する電力がさらに必要になります。こんな膨大な電力を、太陽光パネルだけで賄うことは不可能です。それならば、そんなもの導入反対という声が湧き上がってきてもおかしくないのですが、どうですか、聞こえますでしょうか? むしろ聞こえてくるのは、これからAIデータセンターはますます必要になる声ばかり。すなわち、SDGsは死語と化しました。その結果、半導体メモリが不足して高騰してしまい、一般庶民はもう買えないような値段になってしまいました。電力不足を補うために、発電所がさらに必要になり、火力発電所を新設しなければならなくなりました。そこで稼働しているのは、発電用ガスタービンです。
発電用ガスタービンはすでに急激な需要に生産が追い付かない状況に陥っており、受注しても納入が数年先になることから、納入遅れがAIデーターセンターの普及にとって、足かせになることがすでに懸念されています。一部のアナリストは、株式マーケットのトレンドが、半導体から電力関連銘柄に移行していくことを予想しています。今後、ガスタービンが、小型原子炉に置き換わっていくのかもしれませんが、電力を発生するためには、発生した熱で発電機に直結された蒸気タービンを回す必要があります。たとえ、核融合炉が完成しても、最後には蒸気タービンが必要になります。そうすると、蒸気タービンも将来、不足することが予想されます。地球が温暖化するから、二酸化炭素排出量を減らさなければならないと言っていた、長期的なビションや理念は、結局のところ、どこかに行ってしまいました。
長期的には冷却化に向かっている地球が、本当に温暖化するかどうかの明確な答えは知りません。結局のところ、また日本は振り回されていますが、AIデータセンターが急増する流れは、実は日本には追い風になっています。 半導体製造装置、フォトレジスト、そして発電用ガスタービン。これらは、今後のAIデータセンター導入に際して、要となる最先端技術です。そして、その開発では日本が世界を大幅にリードしています。これらは、長年に渡る技術改良により開発されてきました。コツコツと地道な努力で技術を改良して、今日に至っています。短期的に利潤を追求する社会では、決して実現できない技術です。そこに、日本人だけが持つ特異性があると、私は思っています。日本人は生まれながらにして器用です。それは、縄文時代から1万年以上、この島国で生きてきたゆえのことです。これはたぶん他国が真似しようと思っても、民族的になかなか出来ないことでしょう。
これまでの私の研究にも大いに関係しているのですが、現在、天然ガスが燃料である発電用ガスタービンは、いずれその燃料が水素に置き変わっていくでしょう。そうなった時、水素はどこから得られるか考えてみてください。水素は水を分解すると生成できます。その水は、いまの日本の周りに無尽蔵にあります。これから25年後を想像してみましょう。石油や天然ガスが地政学上、争いの種になっている21世紀前半、でも21世紀後半には水がそれに置き換わているのは必然です。21世紀後半には、日本は間違いなく資源大国です。でもそれは同時に、地政学的に、紛争に巻き込まれる恐れが増大することを意味します。若いみなさんが生きているであろう時代にです。実はすでそれを見越した動きはひそかに進行しています。宮城県の水道がいまどうなっているかご存じですか? 将来を見据えて、こそこそと、触手が伸ばされています。
AI 技術を推進しながら、持続可能社会を実現できるのは、もしかすると、日本だけかもしれません。それを実現する唯一の方法は、水素燃焼ガスタービンだと、私は思います。ガスタービン自体は、技術的にはすでに確立されています。むしろ、水素生成技術とその貯蔵技術の確立です。現時点では、まだ課題が山積していますが、目指すべき必然的な方向です。これから25年以内に誰かが画期的な技術を開発すれば、日本にも明るい未来が訪れます。何と言っても、水素燃焼ガスタービンから排出されるのは、水だけです。二酸化炭素や窒素酸化物は出てきません。太陽光パネルや風車で発電した電力は電力グリットに流すのではなく、電力グリットからは切り離して、海水から水素を分解するのに使えば、AIデータセンターと持続可能社会は両立させることができます。
