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永平寺を訪れて

 先週、福井で開催された学会に出張したついでに、永平寺を参拝しました。道元禅師が日本で開祖した曹洞宗の大本山です。福井駅から、えちぜん鉄道に乗って永平寺口で降りて、そこから永平寺行のバスに乗って、50分くらいで着きます。もしくは、永平寺ライナーという直通の高速バスも福井駅から出ています。写真のようにものすごく広い境内ですが、そのうち写真中で赤色で示された七堂伽藍(しちどうがらん)と呼ばれている7カ所を、一般参拝者も拝観料を支払って見ることが出来ます。僧侶が修行しているところも見ることができるようですが、朝9時過ぎに行ったので、すでに朝のお務めは終わっていたのでしょう。どなたかの法要が1つだけ行われていました。座禅をひたすら組んで、それを会得するのが曹洞宗の教えです。母方の実家も曹洞宗の檀家でしたが、座禅を組んだ記憶はありません。また、今は足が完全には曲がらず正座を組むこともできません。それはともかく、「無心で座禅を組む」ことを、修行僧が1年、3年、10年と毎日続けて、その意味を徐々に会得していくわけです。煩悩だらけの私にはそもそもそれを続けることは不可能です。

 みなさんも煩悩だらけかと思います。食欲、性欲はともかくとして、物欲、金銭欲、出世欲、承認欲などなど。でもなぜ、出世欲や承認欲に駆られるのでしょうね。ついつい他人と比較して、自分が劣っていることに劣等感を覚えて落ち込んだりしてしまいます。私も若い頃は劣等感の塊でした。それが年をとって60も過ぎると、比較する意欲・気力も失せて、諦めモードになり、今日に至っています。煩悩が年とともに減ってしまったのでしょうか?修行僧が毎日朝課で音読している般若心経には、「色即是空」「空即是色」と書かれています。深ーい意味があるのでしょう。それを私が会得するのは所詮無理な話です。でも、いまの私には、これまで歩んだ人生の終着駅に近づいていくにつれて、何となくその意味がわかってきたようにも思います。もがきながら生きる人生、これから何があるかはわかりません。修羅場も数回経験するかもしれません。でもそれを乗り越えず早々に諦めてしまったら、「色即是空」の意味もわからずじまいでしょう。

 参拝順路の終わりに、20分程度の紹介映画が上映されていましたので、それを見ました。日常の修行がどれだけ大変かというのがわかりました。起きているうちにする行為はすべて修行です。毎朝3時に起きて、朝課、食事、掃除、入浴、そして座禅などと。これらの儀式が800年以上毎日脈々と続いています。もしつらい煩悩に取り付かれていると思ったら、座禅の体験でもしてみてはいかがでしょう。