初めの一歩
「だるまさんが転んだ」という子供の遊びを、どれくらいの人が知っているのかわかりませんが、この遊びの最初、「初めの一歩」と言って、一歩踏み出します。物事何ごとにも初めの一歩があります。生まれたときの初めの一歩、初めて歩いたときの初めの一歩、小学校に入学したときの初めの一歩。就職したときの初めの一歩、そして結婚したときの初めの一歩。人生は初めの一歩の連続です。趣味や特技なども初めの一歩ではみんな初心者です。私もこのホームページを始めたときは、まさに初めの一歩でした。それが3年も経つと、立派なホームページに仕上がっています。最初は本を自分で出版するなど想定もしていませんでした。将棋の藤井聡太も初めの一歩がありました。現在、8冠将棋戦タイトルを獲得しています。野球の大谷翔平も初めの一歩がありました。ベーブルース以来の二桁勝利、二桁本塁打を成し遂げました。身近では、仙台の秋保に慈眼寺を建立した、塩沼亮潤住職は、9年かけて毎年4ヶ月間、毎日、吉野山の山道を歩き続け千日修行を成就しました。当然、初めの一歩がありました。
それではどうして、このようなことが成し遂げられたのでしょう?「まずは隗より始めよ」ということわざがあります。史記の中に書かれています。紀元前280年頃の戦国時代にあった燕という国の昭王が、国力を強めるために、郭隗(かくかい)という学者に相談したところ、言った言葉とされています。「まずは私、隗から採用しなさい。そうすれば、国も栄えるでしょう」という主旨です。それが現代訳では「何ごとも、まずは自分から始めよ」となっています。小さなことでもいいから、まずとにかく始めましょう、という風に解釈してもよさそうです。私の恩師のそのまた恩師は、「初めはあまり好きでなくても、やっているうちにだんだん好きになり、いずれはそれを極めることができる」ということを、退官時にまとめた研究業績集の中に書かれていました。みんな、初めの一歩です。初めの一歩を踏み出せば、あとはどんどん進んでいける人もいるでしょう。
でも、やり出すのがおっくうで、なかなか気が進まないことはあります。たとえば、部屋の掃除とか。私もおっくうで最初はやる気がしません。だいたいあまりに汚いから、仕方なく始めます。すると今度は掃除に夢中になっています。初めの一歩が踏み出せても、その後、二歩、三歩、続かないときもあります。このような人?事?を、いわゆる三日坊主と呼びます。少し太り気味なので、ダイエットするぞ、とジョギングを始めたり、ルームサイクルを買ってこいだり、チョコザップと契約して通い始めても、3日で止めることはないにしても、2,3ヶ月で止めてしまうこともあるでしょう。私も以前、ルームサイクルを買ったことがあります。どれくらい続いたかも記憶にありませんが、気がついたときは部屋の邪魔者になっていました。そして捨てました。初めの一歩を踏み出すのも、それなりに気合いが必要です。さらに二歩、三歩、続かなかったことを経験した人も多いでしょう。
それではどうすれば、初めの一歩が、二歩、三歩になり、百歩、千歩、1万歩になるのでしょう?みなさん、ゲームはお好きでしょう。始めると、下手すると死ぬまでやってしまいそうな人はいませんか?実は私がそうですが。このとき、脳内にはドーパミンが大量に放出されています。ドーパミンの前駆体は腸内で腸内細菌が合成しています。結局のところ、人間は脳内物質により支配されています。そして、脳内物質は腸により支配されています。さらに、腸は腸内細菌により支配されています。ドーパミンを適度に放出すれば、やりたいことが続けられます。そのためには、「好きなこと」をやる。やっていることを「好きになる」しかありません。嫌いなことは長続きしません。また、人の集中力は高々30分しか続かないようです。よっぽど好きでない限り、それ以上やっても飽きてきます。大学の講義が典型です。本来、90分は生理学的にみて、長すぎます。さらに、物事が習慣化するには、2週間続ける必要があるという統計結果があります。
そうしますと、始めたことが30分単位で2週間続けられれば、その後、1万歩、100万歩まで続けられるかもしれません。私もそうやって、地下鉄内での読書を習慣化しました。そして、それを千時間、1万時間続ければ、藤井颯太や大谷翔平のように、それを極めることができるのかもしれません。