ミュンヘン40日その3

ミュンヘン40日その3

 さすがにプログラム作りは不便なので、日中はS先生からいろいろ文献をいただいて、読んでいたことが多かったです。昼は少し離れたところに結構おしゃれな食堂があり、複数の学生といっしょに食べに行ってました。メニューですが、ペイスト状、ハッシュ状、ふかしただけの、ジャガイモばかり。それに肉かサーモンをつけて、なぜかサワークラフトが付きます。はっきり言ってすぐ飽きましたが、食後に売店で買った、Ritter Sportの板チョコにハマってしまい、毎日買って食べていました。特にヘーゼルナッツ(時々、ヘーデルナッツと言ってしまう)入りのチョコは最高です。日本ではあまりお目にかかれないですね。数年前、研究室に1年間ドイツから留学した女子学生がおりましたが、彼女に私のお気に入りチョコを教えたところ、帰国後も毎年送ってくれます。ありがたや、ありがたや。

 話がそれかけたので、もとに戻すと、研究室で一番印象に残っているのは、10時と15時にコーヒーブレィクの時間があり、秘書さんがコーヒーマシンでおいしいコーヒーを入れてくれたことです。さらに、同じフロア―にある複数の研究室から、先生、学生がたくさん集まって、コーヒーを飲みながら、フリートークしていたところです。私もできるだけ輪に加われるよう、拙い英語で話しかけると、みなさん英語で答えてくれました。ただ、話が盛り上がりだすと、当然ドイツ語での話になりますので、私はまったく話に加わることができません。日本でも同じですね。留学生の立場になると、日本語で話す学生の会話にはなかなか入りずらいところがありますから、私もできるだけ気を付けるようにしています。あと、秘書さんには、鶴や風船の折り紙を差し上げたところ、珍しそうに喜んでくれたことを覚えています。

 土日は休日で、毎週末1泊で旅行を楽しんでいました。ミュンヘンは観光の拠点としてたいへん都合のよいところにあります。なになに街道というのがドイツにはいろいろあるのですが、一番有名なのがロマンチィック街道で、ミュンヘンはその基点です。南北に中世のおもだった町を繋ぐ街道です。北側で有名なのがローテンブルグ、南側で有名なのがノイシュヴァンシュタイン城ですが、どちらも観光しました。ドイツは電車での移動が便利で、日本でジャーマンレイルパスを購入して、ファーストクラスを利用したちょっと贅沢な旅行を楽しみました。ローテンブルグは、典型的な中世ヨーロッパの街並みで、初めて見たものとしては、たいへん印象的なものばかりでした(ただ、その後訪れた町も似たようなところばかりで3か所目で飽きました)。その中で、印象に残っているのは、中世犯罪博物館です。ロマンチックな名前とは裏腹に、犯罪者への様々な拷問の仕方や道具、被害者の復讐の方法など、え、こんなことしたの、と思うようなものがたくさん普通に展示されていました。宿泊はいわゆるB&Bにしましたが、日本と違い、当日直接ホテルで部屋を確保することができました。一方、ノイシュヴァンシュタイン城も訪れました。一部工事中でしたが、写真でしか見たことがなかった城の実物を見ることができたことは、貴重な体験でした。

ローテンブルグの街並み

ノイシュヴァンシュタイン城(一部工事中)

 ミュンヘンの日頃で一番感じたのは、皆さん服装は派手目がなく、無駄口もせず、整然としてルールにも従順で、どこか社会主義の国かと思えるようなところでしたが、オクトーバーフェストが開催された途端、一変しました。開催中の土曜日に私は旅行のため、ミュンヘン駅から朝電車で移動しようと駅で電車を待っていたところ、駅に郊外から到着した電車から降りてきた乗客を見て、目を疑いました。ビール瓶を片手に、すでに酔っ払った乗客がたくさん降りてくるではありませんか。朝ですよ。そのままオクトーバーフェストの会場に向かっていました。女性の恰好も、たぶん民族衣装でしょうか、結構胸元がはじけたカラフルなスカート衣装を着ていました。それを見て納得したのは、日頃のスタイルはかなり抑制されたものなのだということです。短いオクトーバーフェストの期間中にストレスを全開放しているようでした。そのオクトーバーフェストですが、当初の目的?の通り、S先生、秘書さん、学生の皆さんとともに参加しました。参加する前に、1リットル入る大ジョッキを三杯は飲まないと男じゃないとか言われて、たしかに三杯は飲んだことは覚えているのですが、帰る段階で、立ち上がることができなくなり、G君に抱えられながらホテルに帰ったこともよく覚えています。翌日ひどい二日酔いでしたが、昼頃に研究室に行った時、S先生から笑われてしまいました。今となっては、いい思い出です。たくさん大型テントが立っていて、その中にどれだけの人がいるのかわからないくらい大勢の人たちがビールを飲んでいました。S先生の酔っ払った写真とかもたくさんあるのですが、顔写真を出すのは控えます。

 目的を達成して、40日の滞在を終え、帰国の途につきました。後日談になりますが、帰国後、からだ中に帯状疱疹ができてしまい、皮膚科でもらった薬をしばらく塗るはめになりました。たぶん、海外滞在の見えないストレス下で毎日ワインを飲んでしまい(チョコも食べた?)、肝臓がまいっていたのだと思っています。

オクトーバーフェストのテントとその中