処世術について面接でガチンガチンに

面接でガチンガチンに

 3月になりましたので、就職面接シーズンの始まりです。最近は、Webでエントリーシートを提出して、さらにはここ2年間は感染予防のために、オンライン面接になっています。以前にも、面接が苦手な学生が時々おりました。やはり不採用になってしまう場合が多いです。人生をかけた面接。たった10分程度で、自分の善し悪しを判断されるのは理不尽だと思っている学生をたくさんいるでしょう。私も教員の立場で、企業面接前の模擬面接を何度か担当して、数十名の学生と面接をしたことがありますが、面接に合格する学生とそうでない学生はだいたいその時にわかります。まず、みんな大なり小なり緊張します。これは本能ですから、仕方ありません。逆に緊張しない人は、もしかすると脳内物質にかかわった病気かもしれません。したがって、緊張するということは、体が健全であると肯定的に捉えた方がいいのですが、緊張が緊張を呼んでしまう人は、緊張することを否定的に捉えてしまうのでしょうね。無理に緊張を押さえようとするため、逆効果になってしまい、挙げ句の果てには、体がガチンガチンになってしまう学生も過去にはおりました。

 緊張してしまい、結局チャレンジに失敗してがっかりしたことは誰にでも経験あるかと思います。私も、まだ30代の頃、国際会議の発表では、緊張して頭が真っ白になったことが何度もあり、自分でもわけのわからないことを話して、その場を濁していた記憶があります。前にも書きましたが、準備不足がその原因であったことを後々認識しました。某大手企業の面接で落ちた研究室の学生がおりました。そこで、個人的に面接の練習をしてあげようと、私が面接官になりました。まずはその前にいつものように冗談まがいで雑談していたのですが、人当たりのいい陽気な学生で、会話も弾みます。「それでは、いまから面接を始めます」と言った瞬間に、急に体に力が入って背筋も伸びたのは良いのですが、先ほどまでのリラックスした会話が、石のような堅い会話に豹変しました。肩に力が入りすぎて、動作もぎこちなくなってしまいました。その状態を見た瞬間、「あ、これは直らないな」と直感しました。「もっと、リラックス、リラックス」と言えば言うほど、石になってしまうタイプであると認識しました。幸い、彼は一度落ちた企業と同業者である別の大手企業に就職することができて、いまはそこで活躍しています。

 模擬面接などから見ても、面接に受かる学生は、面接中も見た目は普段と変わらない感じです。緊張しているのは間違いないのですが、それが表に出てきません。何が違うのか?いろいろあるとは思いますが、一番はやはり、本人のバックグラウンドに裏付けされた準備かと思います。面接だけを表面的に見繕うとしても、面接官は人事のプロですから、バックグラウンド、すなわち、本人の実力を探りに来ます。「研究内容について簡単に説明してください」「弊社を希望した理由を教えてください」、はほぼ間違いなく聞かれることです。自分の研究や志望動機が論理的に説明できないと、本人のバックグラウンドが疑われます。その際、緊張してしまい頭が真っ白になっていまうことは十分考えられますが、面接官はそんなことは百も承知です。結局のところは、バックグラウンドの不完全さとその説明の準備不足が、緊張をより誘発してしまいます。自分の実力を発揮しなければならない面接の場でそれが発揮できないのは、たまたまそうなったという場合よりも、やはり日頃からコツコツ積み重ねていく努力が足りないせいです。大学に入学した時点から、プラス1%の努力を積み重ねていくかどうかが大きくかかわっています。面接に受かる学生は、受け答えもしっかりできています。まさに日頃の心がけかと思います。

 他にもマズい面接のケースがあります。本人の性格や話し方、そしてしぐさや服装など。暴れたり、暴言を吐いたりするのは論外ですが、そうでなくても、ちょっとしたことで、面接官が不快に思うこともあります。本人はいたって普通だと思っているのでしょうが、たとえば、某自動車会社を希望していた学生の模擬面接をしたことがありますが、「私は絶対F1のチームに入りたいです」と、自己主張はしっかりしていました。「F1チームは世界に通用する人でないとだめですよ。」と言っても、「いや、自分はF1がやりたいです。」と繰り返します。なぜ、私がそのように言ったかというと、彼の足下を見たら、ズボンの裾が靴下の中に入っていました。面接でその状態というのは何?と思ってしまったわけです。F1チームではみなさんそのようにしていたのか、彼がその後、希望の企業に晴れて入社できたのかは知りません。他にもマズいケースはありますが、今日はこの辺にしておきます。