遮光器土偶
東北歴史博物館で開催されていた「世界遺産 縄文」展で特に目を引いたのは、遮光器土偶です。ずんぐりした体型に人とは思えない爬虫類のような真ん丸で大きな目玉が二つ付いた顔、その目玉にはスリットのような横長の筋が付いており、この形が眩しい日差しを避けるために使う遮光器に似ていることから、この名前が付けられました。ある特定の縄文遺跡から発掘された唯一の土偶かと思いきや、7つの遮光器土偶が展示されていました。すべて違う場所の縄文遺跡から発掘されています。
秋田県大仙市の星宮軌跡、秋田県北秋田市の藤株遺跡、青森県三戸町の八日町遺跡、青森県つがる市の亀ヶ岡遺跡、岩手県盛岡市の手代森遺跡、岩手県岩手町の豊岡遺跡、そして宮城県大崎市の恵比田遺跡から発掘された遮光器土偶です。どうでしょうか? 東北地方に満遍なく、遮光器土偶が見つかった縄文遺跡があったことになります。通常は各地の博物館などに展示されていたものが、一同集まっていましたので、たぶん次に見れるのはずいぶん先になる貴重な特別展です。東北歴史博物館での展示は9月15日まででした。その中でも、宮城県大崎市でも発掘されていたことを始めて知りました。発掘された中でもほぼ完全な形をしていたことから、通常は東京国立博物韓に展示されているようです。ちなみに、山形県の遮光器土偶はありませんでしたが、山形県舟形町の西ノ前遺跡で発掘された、「縄文の女神」と呼ばれている独特な形をした土偶(複製)が展示されていました。国宝になっています。




7体展示されていた遮光器土偶ですが、ほぼ同じ形をしていました。腕と足が太く、体には模様の付いた服なのか、入れ墨なのか模様が施されています。女性を思わせるような乳房と下腹部に穴も開いています。目玉は真ん丸で遮光器のように横に細いスリットがあります。顔にも入れ墨と思われる模様があり、頭には冠のような物を被っています。この頭の冠から、祭祀と深く関係していたことは容易に想像されます。ほぼ同じ形の土偶が東北地方の離れた場所で見つかったということは、それぞれの遺跡間で交流があり、情報交換しながら、それぞれの場所で造られた物か、もしくはどこかの遺跡で造られて移されたものか、各遺跡にはかなり共通の文化や習慣があったことを物語っています。
ここで誰しもいだく疑問として、どうしてこんな形をしている、どうしてこんな目玉をしている、ということかと思います。その疑問自体が縄文文明に興味を抱くきっかけになると私は思います。実際、私もそうでした。まず、縄文人は物がうまく造れなかったという疑問はすぐ払拭されます。動物の土偶もたくさん展示されていましたが、たとえば、猪の土偶は極めてリアルに造られています。したがって、ただの人を対象として造られたものではない(宇宙人?シャーマン?)ことは容易に想像できます。どうしてなのか、現時点では私も想像の域にあります。今後、その謎を探求していきます。ちなみに、伊勢堂岱遺跡でレプリカになっていた板状土偶にも再会?することができました。ただ、私がいだいた価値感ほどの取り扱いがされていなかったのが、少し残念でした。せめて、立てた状態で展示して欲しかったです。

