人生について価値観について親友ひとりいればいい

親友ひとりいればいい

 「1年生になったら友だち百人できるかな♫♫♫~~」という歌がありました。まどみちおさん作詞、山本直純さん作曲の歌です。小学校に入学する1年生を元気づけるいい歌ですね。こんな純粋な心が大人になっても続くといいですが、でも百人できた友だちの名前をみんな覚えることできるのでしょうか?いきなり、現実に引き戻してしまいました。フォロワーが100人になった。うれしー。一生懸命、フォロワーを増やした成果が報われました。でも、フォロワー全員把握してますでしょうか?フォロワーを増やしていたのか、それともフォロワーの数だけを増やしていたのか?いわずもがなでした。以前書きましたが、私もインスタグラムに写真を投稿していたことがありました。自宅の庭に咲いた花の写真を投稿していたのですが、いつの間にか、「いいね」やフォロワーの数を増やすのが目的になっていることに気づき、インスタグラムはやめました。「いいね」やフォロワーを増やすことに生き甲斐を感じる人は、それでいいのです。それがその人の価値観だからです。価値観はひとそれぞれです。でも、これが人間の承認欲をうまく利用したマーケティングだとしたら、考えた人は天才です。そのおかげで、SNSのユーザーは増え続けます。

 SNSの時代、なんかとにかく繋がっていないと取り残されたような不安感に襲われ、「友だち」を増やすのに一生懸命になります。いまやLINEのユーザーは日本国内で8千万人とかで、日本の人口が1億2千万人だとすれば、3人に2人はユーザーです。でも我が家では私と家内は使っていません。地下鉄で通勤しているときに、スマホの画面をのぞき込むことがありますが、緑色のLINEの画面かゲームの画面を見るのがほとんどです。LINEでメッセージを送れば、当然その返事を待ちます。送ったLINEの返事をせっかちに待っている女性も多く見かけます。返事が来ないとイライラしますね。私はこれが嫌いでLINEはやりません。自分の時間を制約されてしまうのが嫌だからです。実は電話も嫌いです。その理由は別にあるのですが、電話も自分の時間を制約されてしまいますね。そのため、私のコミュニケーション手段はもっぱらメイルです。メイルといっても、もちろん郵送の手紙ではなく、emailです。自分のペースで返事ができるのが最大の理由です。「友だち」がたくさん増えて、満足感を感じている方もいるでしょう。でもよく考えてみてください。「友だち」って何なのかを。学校での友だちは、一緒に遊ぶ人。職場での友だちは、よく一緒に飲みに行く人。ママ友という友だちもありますね。いずれの友だちも、一度は対面で会ったことがあるはずです。SNSの友だち皆さんにも、お会いしたことはありますか?

 Facebookもすでに2年ほど投稿しておらず、脱退するかどうかずーと迷っています。そんなところにも、友だちリクエストしてくる人がいます。全然知らない人です。友だちの数を増やすのが目的でしたら、来るもの拒まずで友だちを承認すればいいのですが、はたして、「友だち」って何?とわからなくなってしまいます。結局リクエストはみんなほったらかしですが。友だちの定義は人それぞれでしょうし、時代とともに変わっているのでしょう。ただし、私の中では、友だちはあくまで呼び捨てで名前を呼び合える関係です。「さん」付けで呼び合う人は友だちではありません。どうでしょうか?SNSのお友だちを、呼び捨てで呼び合うことはできますか?まして、対面でお会いしたことはありますか?友だちの定義があまりにも軽くなってしまったと思うのは私だけでしょうか?Zoomなどが急速に普及したおかげで、物理的な対面でなくても、顔を見ながら会話ができるようになったことは、友だちの定義をグレードアップしてくれました。自らの声で会話ができますので、顔を見ながら会話すれば、相手の人となりもある程度把握することはできます。指で会話するのよりは格段にましです。

 友だちを発展させたところに親友があります。さらに、朋友という関係もあります。「史記」には、「刎頸の友」もあります。友のためなら首を刎ねられても構わない仲の例えです。そこまでいかなくても、親友がひとりでもいれば、人生きっと助けになるでしょう。私は、研究室に仮配属(正式配属ではなく、それまで教員がアドバイザーになって面倒を見る)されてくる新入生に必ず、親友を創るようにアドバイスします。最近、大学でもいろんな理由で、学生が引きこもってしまいます。突然そのようになるというよりは、徐々にそのようになってしまうのですが、そうなる前に、相談できる親友がいれば、愚痴も聞いてくれるし、相談にも乗ってくれるし、お互い助け合うこともできます。概して、心を割って話し合える親友がいない学生は自分ひとりで悩んでしまい、気が付いたら自分ではどうすることもできない状況に陥ってしまうようです。SNSでできた友だちが、相談相手になってくれればいいのですが、お互いフォロワーの数を増やすためだけの友だちですと、それは無理でしょう。もちろん、SNSがきっかけで親友になる人もいるでしょう。きっかけはいろいろです。親友と呼べる人を一人でも多く創ることは、いざというときにきっと助けになるはずです。ひとりでも創れば、その人を通してその人の親友との知り合うこともできるでしょう。