縄文からの伝承
日本は、2万年前に始まった温暖化により、1万年近くかけて海面が上昇して島国になり、今日に至っています。島国になる前は、大陸から人類が移動してきたり、また大陸に行ったりしていたことは容易に想像できます。島国になる前にどんな人類が移動してきたかについては、遺伝子解析ですでに明らかになっていますが、どんな人類が住み着いたかというよりは、島国になってからの環境や生活の方が、日本人形成に大きな影響を与えてきたのは間違いありません。まずは、島国になったことにより、大陸からの侵略は難しくなりますので、敵は減ります。実際に侵略されたことは、第二次世界大戦後まではありません。一方で、狭い島国の中で生きていかなければなりません。特にこの島国は自然災害が頻発します。大陸の民族からすれば、そんなところによく住んでいるということになります。地震、津波、火山噴火、台風、洪水と自然災害のオンパレードです。
でも幸いなことに、気候は温暖で、雨も適度に降り、周りの海からは食料となる魚が豊富に獲れます。春から夏にかけての雨期で植物は茂り、秋にその恵みを収穫できます。森林には小動物が住み着きます。1年を通していろんな食料に恵まれるので、どの季節に何が獲れるかを学習します。縄文時代には縄文カレンダーのようなものがあり、季節の変化に合わせて、何が獲れるかを把握していました。森林がなくなり砂漠になって、水がなくなってしまい、滅亡した民族も大陸にはいくつかありました。日本は幸い、水が途絶えることはありません。なぜならば、地球が回転している限り、太平洋の赤道上で発生した台風は、毎年のように日本にやってきて大雨を降らせます。そもそも、日本を取り囲む海水がなくなることはありません。また、縄文時代の人口はいまより2桁少なかったことから、食料は島国の中で完結していました。大陸からの敵は来ないし、食料も探せば見つかります。島国の中で争う必要もないでしょう。
稲作はまだ始まっていませんから、縄張りもありません。一方で、広い海や森林を囲い込むこともできません。争いごとは、夫婦げんか、兄弟げんか、近所げんか、くらいだったと思います。それでも、いつ地震が起こるかわからないし、いつ火山が噴火するかもわからない。地上に恵みを与えてくれる太陽は良い神で、地震や火山の神は悪い神と思っていたかどうかは知るよしもありませんが、いずれにせよ、神々の存在を意識してもおかしくないでしょう。そして、太陽神への感謝、大地や山や河の地鎮などから、神々への祭祀が始まったものと想像します。それが発展して、動物や植物にも神が宿り、神が人となって生まれてきて、そして死んだらまた神になる。すべての生きとし生けるものがすべて神であるとする、八百万の神信仰が根付いたものと私は確信しました。そのような生活が1万年以上続いた縄文人の精神は遺伝子化されて、日本人の遺伝子に組み込まれているはずです。
そうでなければ、生まれながらにして、自然と溶け込み、人と和し、相手を思いやる心はあり得ません。現在、日本の文化や精神は縄文人のものとはかけ離れてしまいました。大陸からどんどん大陸の文化や物が入ってきますので、それは当然です。大陸の物や技術に日本は遅れていると感じている若い人も増えているでしょう。エネルギー資源もなく、海外に依存して生きていかなければならない日本の宿命かもしれません。一方で、日本の文化が世界を席巻しつつあることに気が付いている人もおられるかと思います。日本人特有の文化があります。日本人にしかできない習慣もあります。それらの習慣に共感する外国人も増えています。実はこのような文化や習慣はすでに縄文人から始まっているとしたら、どう思いますか?日本人を再考する上で、縄文文化を知ることが大きな助けになります。