人生について価値観について処世術について絶対的価値観を持つ

絶対的価値観を持つ

 人は生まれくると、母親に接し、家族に接し、人々と接します。人は一人では生きていけません。人と接することで成長します。したがって、人は相対的な存在になり、他と比較することから避けられません。自我が芽生えると自分の価値観が生まれ、その価値観は他の価値観と衝突することがあります。自分の価値観は周りにも認めてほしい。しかし他人の価値観は受け入れたくない。これは人の持つ本能である、「承認欲」から来ています。人間の欲求には、食欲、性欲、睡眠欲などの他に、この承認欲があります。したがって、自分の価値観に基づく価値を認めてもらいたい承認欲は、本能から来るので避けられません。地位・名誉、財産、所有物、などに価値を見出して、それを認めてもらいたいと思うわけです。これら価値の獲得が明確な目標になれば、やる気につながりますから、信念を持って進めばきっと獲得できるはずです。ただ、「あの人には負けたくない」というのが動機になると、勝っていると思っているうちはいいですが、負けた、劣っていると思ったとき、挫折感やコンプレックスを感じます。なにくそという原動力になれば、スポーツ選手のようながんばりにつながりますが、場合によっては、ニーチェの言うような、「ルサンチマン」に陥ります。ルサンチマンとは、妬み、嫉妬などの暗闇が支配する負の感情です。承認欲とは裏腹な本能です。お釈迦様は、「人間の欲望はヒマラヤの山を黄金に置き換えても、満足することはない」と仰ったということを、曹洞宗僧侶である枡野俊明さんの著書[1]に記されていました。仏教では、比較することはもっとも避けるべきことであると教えられているそうです。そんな比較はしないよう日頃から心掛けましょうと、その練習方法ついて、同じく僧侶の草薙龍瞬さんも著書[2]に書かれていました。結局のところ、承認欲は決して満足されることはないということですね。私も以前はまさに価値観の衝突で苦しめられてばかりでしたが、これらの著書と出会って心構えが変わりました。周りには惑わされず、絶対的な価値観と強い信念を持って目標に向かいましょう。そうすれば、きっと光が差す時がきます。価値観は人それぞれ違います。その価値観を押し付け合うところには安寧な心は生まれません。

[1] 枡野俊明、傷つきやすい人のための図太くなれる禅思考、文響社. [2] 草薙龍瞬、反応しない練習、KADOKAWA.