俯瞰力について日本人再考

経年劣化

 物を長年使っていると、経年変化が起きます。長年使用していたジーンズなどに高額の値段が付いて、ビンテージ物になったり、作家物の陶器や盆栽などの手づくり品が年を経るほど価値が出てきたりもします。でも、ほとんどの機械、たとえば、自動車、航空機、自転車や、洗濯機、冷蔵庫、テレビ、PCなど家電は基本的に消耗品ですから、長年使用しているうちに経年変化して、そのまま経年劣化に繋がります。そうした場合には、部品を取り換えなければなりません。人間の体も歳とともにガタが来て、いろんな臓器や骨や筋肉が衰えてきます。これは加齢による経年劣化です。人間の体は機械と違い、置き換えができません。そのため、運動したり、暴飲暴食を避けたり、ストレスを減らしたりして、健康を維持しようと努めます。

 さて、国家も世代が変わる年月で、経年劣化してしまうのでしょうか?これまで最も長く続いている国家は、まさに日本ですが、神武天皇が建国したとされる紀元前660年から約2700年続いているとするのが、皇紀に基づく日本の歴史です。世界的には、デンマーク王室は約1000年、英国王室は約950年続いているとされています。三大宗教を背景にした国家も誕生しましたが、ユダヤの国家はダビデが紀元前1003年にイスラエル国家を建国して、約1000年続き、紀元70年にローマ帝国に滅ぼされました。そのローマ帝国は紀元前27年に建国されましたが、395年に東西に分裂して、西ローマ帝国は476年にゲルマン人に、またビザンツ帝国と呼ばれるようになった東ローマ帝国も中身が変貌したり徐々に衰退しながらも千年近く続きましたが、1453年にオスマン帝国に滅ぼされました。そのオスマン帝国は600年近く続きましたが、第一次世界大戦で敗北してから、1922年に革命により分裂して、その一部が現在のトルコになっています。

 これら王国や帝国は世代からすれば10世代近く以上続いていますので、長く続いた国家だといえます。他にも王制国家はたくさん建国されてきましたが、いずれもこれらの国家よりは短命に終わっています。王族間のいざこざが原因で王が交代したり、他国や他民族や異教徒から侵略されたりして、長い年月でみれば、国家が入れ替わり立ち替わりしています。これらが経年劣化によるものかどうかはケースごとに違うでしょうが、いずれにせよ国力が衰えた結果として滅亡したのだとすれば、経年劣化により国力が衰えていったとすることもできます。国力が弱まる要因は、その国の民族というよりは、その国を支配している支配者の浮き沈みが最大の要因であり、経年劣化するのも、その支配者たちでしょう。実際のところ、支配者が入れ替わることで、支配者が属する民族が入れ替わることにより、国家は入れ替わります。

 前置きが少し長くなってしまいましたが、最近のSNSを通した言動を見ていると、もしかして、どこかの国はまさにその時期に来ているのかと思えてきます。昔は偉人をたくさん輩出して、偉大な支配者がいて、私も好きな国だったのですが、なんか最近やっていることは、品のない嫌がらせばかりのように思えます。国の支配者がみんな経年劣化してしまっているのでしょうか? どうみても、このままこれを続けても、どこかの国が尊敬される一流の大国になることはあり得ないように思えます。国家を貫く理念が力による多民族の統一であるとすれば、その火だねを押さえつけるのに、だんだん疲労してきたのでしょうか?一つの火だねを潰そうとして、というよりは、むしろ火だねに油をそそいで、事を荒らげているとしか思えませんが、いかがでしょう?