究極の発電技術
先週の話に続く内容になります。先週は、地球温暖化を防ぐために再生可能エネルギーを使おうということについて書きました。2019年スペインで開催されたCOP25で日本はまた化石賞を受賞して、環境活動家のグレタさんにこけ下ろされました。昨年度のイギリスで開催されたCOP26でも日本は化石賞を受賞しました。今年もエジプトでCOP27が開催されました。またまた日本は化石賞を受賞しました。でも、日本をこけ下ろしたグレタさんはCOP26から参加していません。大人になって世代交代でもしたのでしょうか?それともスウェーデンから遠すぎて、帆船で行くのは無理と判断したからでしょうか?最近、環境活動家から共産主義者になったという話もあります。日本はそんなに化石燃料を使っているのでしょうか?たしかにその通りです。現在日本の総発電量の80%近くは相変わらず火力発電に頼っています。残りは、水力、太陽光、原子力、バイオマスなどで賄っています。先にも書いたとおり、18%程度が、再生可能エネルギーになります。世界に目を向けてみると、ノルウェーはほぼすべての電力が水力です。カナダ、スイス、アイスランド、ブラジルなども50%以上が水力です。アイスランドは水力と地熱ですべての電力を賄っています。一方、フランスは約70%を原子力で賄っており、ベルギー、スウェーデン、フィンランド、そしてスイスも原子力の比率は比較的高いです。震災前は日本も同じくらいの比率がありました。それ以外の国は、総発電量の過半数は火力発電により賄っています。
日本の火力発電への依存度は世界的にも高いことはたしかです。それは東日本大震災が影響しています。現在、原子力がほぼすべて停止していますので、それを火力で補っています。日本に対して、化石賞を授与するというのは、この状況に皮肉を込めているわけですが、でも火力発電による二酸化炭素の排出削減を日本にだけ要求しても、世界で最も排出している中国、アメリカ、そしてインドが協力しなければ、焼石に水なのです。中国、インドは、70%近く火力発電に依存しているところは日本とほぼ同じであるのに対して、その内訳が問題で、ほとんどが石炭火力です。石炭火力は、天然ガスを使用するガスタービンコンバインドサイクル発電の2倍以上の二酸化炭素を排出します。日本の火力発電の約半分はすでに天然ガスを使用しています。ドイツは、原子力を廃止してすべての発電を再生可能エネルギーにすると宣言していますが、いまだ約50%は火力発電です。自分の国では原子力はやめるが、原子力に頼っているフランスから電力の一部を購入しているのが実態です。これに追い打ちをかけているのがウクライナ紛争で、これまでロシアから購入していた安価な天然ガスの供給がストップしてしまい、結局のところ、石炭火力に依存しなければ電力供給がままならない状況に陥っています。日本もいずれ天然ガスの供給が止まってしまう恐れも捨てきれませんが、日本の場合、島国ですので、液化天然ガスをLNG船で輸送するしかないため、おのずと購入価格はパイプライン輸送に比べて格段に高価になります。よって、高く売りたい国がある以上、いますぐなくなることはないと思います。
二酸化炭素の排出量を減らすことが、「カーボンニュートラル」を実現するため、必須であることは間違いありません。でも、先に書いた通り、仮にすべての発電を再生可能エネルギーにしたとして、その時何が起こるかぐらいは想像がつきます。水力発電以外の太陽光や風力による発電は、日夜、天候に左右されるため、そのままでは電力負荷が変動してしまいます。電力負荷は低すぎても高すぎてもいけません。現在、日本の家庭には100V(一部200V)で電気が供給されていますが、これがたとえば、50Vになったり、150Vになったら、何が起こるでしょう。それもその値が分単位で変わったら?再生可能エネルギーのみにしたら、それが現実で起こるわけです。0Vになるかもしれません。停電しますね。ヨーロッパではすでに現実に起きていることです。これが起きないようにするバックアップ電源が必ず必要になりますので、その電源についても二酸化炭素を排出しないようにしなければ、カーボンニュートラルなどは絵に描いた餅になるわけです。それではどうすればいいでしょう?いまは、それを火力発電に頼っています。さらには分単位の電力負荷を相殺できるのは、火力発電の中でもガスタービンしかありません。原子力を増やしてベース電源による発電量を増やせば、たしかにこの電力負荷変動を弱める効果はありますが、根本的な問題は解決しません。すべての発電を原子力にできれば、たしかにカーボンフリーですが、少なくとも日本では不可能なことです。それでは、核融合発電でしょうか?それとも、宇宙太陽光発電でしょうか?
世界ではいまEVなど電気自動車や電動航空機?などを開発しようとしていますが、EVには電気を充電する必要があり、家庭でEVを使うときは、夜充電しなければなりませんので、日中に太陽光パネルで発電した電力をバッテリーにでも蓄電してそれをEVにも充電することになります。どうでしょう、現実的に成り立ちそうでしょうか?結局、どこかの発電所で発電した電気を充電せざるを得なくなるとすぐ想像がつきます。EV、EVと騒いでいる人たちは、この部分の議論を完全に無視しています。EV車はモーターで駆動しますので、開発するのにそんなに高い技術力は必要ありません。さて、この状況を革命的に解決する方法が唯一あります。それは「水素燃焼ガスタービン」による発電です。現在、ガスタービンは天然ガスを燃料として使用していますが、これを水素に変えて発電する技術はほぼ確立されています。問題なのはむしろ水素生成とその貯蔵・輸送です。現在、日本の大手メーカーではEVなど相手にせず、世界を先導する形で水素生成・貯蔵・輸送技術を研究開発しています。たぶん、これは日本人にしかできない技術開発かもしれません。なぜならば、資源のない島国ならではの発想だからです。でも日本の周りを見渡してみてください。もし、海水から水素を大量に生成して、貯蔵して、輸送する技術が確立されたら、あとは水素燃焼ガスタービンを使えば、カーボンゼロ社会が実現します。そうなると、日本は世界最大の資源国になるのも夢ではありません。現在、世界中の産業用ガスタービンのシェアは、GE、Siemens、そして三菱重工の3社がほぼ独占していますが、なんと、三菱重工が世界シェアナンバーワンになりました。GEはすでに撤退気味ですので、これからも独占が続くでしょう。
水素燃焼ガスタービンの実現にはまだまだ年月が必要ですが、若いみなさんの英知を積み重ねることで、必ずや実現する日は来ると私は信じています。そのときの日本を想像してみてください。日本を取り巻く海水を取り除くことは、たぶん神様にしかできませんので、資源輸入に頼ることのない、むしろ資源強国が実現しています。夢を見失ってしまいそうな世の中でこんなに夢のある話があるでしょうか?