人生について俯瞰力について処世術について為せば成る

為せば成るの繰返し

 誰でも、子供のときに将来の夢があったと思います。でも、大人になって子供のころの夢を実現したという人は、必ずしも多くはないでしょう。人はモチベーション(動機付け)がないと、なにごともやる気が出ないものです。夢を持つことは、それがモチベーションになります。そしてやる気に繋がります。夢は決して諦めない。強い熱意と信念を持ってやればきっと実現する。けど、やっぱり駄目だったという瞬間を迎えることもあります。そのときにあまりにも挫折感が強すぎて、立ち直れない人もいるでしょう。私もこれまで、何度も挫折感を味わってきました。そんな時に出会った中国の古典に、「菜根譚(さいこんたん)」があります。その中に「伏すこと久しきは飛ぶこと必ず高し」(菜根譚後集77条)とありました。じっと力を蓄えていた鳥は、必ず高くまで飛べる、という意味です。この鳥を自分に置き換えることができました。この言葉には後述があり、「開くこと先なるは謝すること独り早し」とあり、早く咲いた花は散るのも早いという意味です。

 「為せば成る」と最近思うことがよくあります。これは元々、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も。成らぬは人の為さぬなりけり」と上杉鷹山(うえすぎようざん)が言った言葉とされている部分の一部です。いまのご時世、情報過多の中で周りとの相対的な関係から、焦らされることが多くなりました。ついつい周りに振り回されて、焦って行動してしまいます。でも焦っても、結局むしろ時間をロスしてしまうのがおちです。「急がば回れ」ともいいます。こういう時こそ、力を蓄えるのが大切であると私は思います。そうすれば、いずれきっと高く飛べる時が来るはずです。そのときに、為せば成ると実感します。実際、私もそのような経験をいくつも重ねてきました。研究がしかりです。流行りものには手を出さず、周りには振り回されず、コツコツと続けてきた研究が実ったときは、それまでの苦労は吹き飛んで、また次への活力につながります。

 どうしてもうまくいかないことは、やめてしまうのも現実的な選択肢です。夢は同時に二つ持ってはいけない、というルールはありません。夢は一つだけでなく、二つ持てばいいだけです。まず、第一の夢を、強い熱意と信念を持って諦めることなく追い求めましょう。でも、それが叶わないと自覚した際には、諦めも肝心です。次は第二の夢を追い求めましょう。またその際は、さらに第三の夢を準備しておきましょう。夢を実現するため進む過程では、いくつもの関門があり、その関門を一つずつ乗り越えながら、すべて乗り越えた時に夢は実現します。その一つ一つの関門を乗り越える際に、それを成し遂げたいという熱意の継続性が違うことで、為せば成るか否かに分かれるのかもしれません。当然、運も伴います。

 それではその熱意はどこから来るでしょう?それは、それを成し遂げなければならない、それは絶対に実現できる、という信念から来るのでしょう。目標設定があいまいだと、信念にゆらぎが生じます。信念がゆらぐと、熱意もゆらぎます。結果的に関門を乗り越えるためのエネルギーが不足します。為せば成ると思えた瞬間を一つでも多く経験していくことで、自信も付いてきます。そのためには、やはり明確な目標の設定が大切です。それは叶えたい夢と同意義です。それでも、人生うまくいかないことはあります。ゆらぎのない心でチャレンジしてもだめだった時、その時はあきらめもつくのではないかと思いますが、いかがでしょう?人生は挫折の繰返しです。でもその挫折を繰り返しながら、関門を乗り越えながら人は成長していきます。そんな人生を振り返ってみれば、生きていてよかったと思えるはずです。