俯瞰力について日本人のルーツを俯瞰日本人再考

日本人のルーツを俯瞰

 中国南西部の山岳地帯に中国で苗族(ミャオ族)と呼ばれる少数民族(自称モン族)が住んでいます。美人が多いことで知られていますが、山岳地帯に棚田を造って、そのさらにその上の方に高床式の建物を建てて収穫したお米を保管しています。日本人の研究者が訪れてそれを見たとき、守りもないので盗まれないか聞いたら、「モン族に盗人はいない」と言われたそうです。苗族は約7千年前から長江流域に広く住んでいた原住民族の子孫に当たるそうです。長江周辺には広大な土地があるにもかかわらず、なぜそんな偏狭な山岳地帯に住み着いたのか? それは、地球規模の気候変動と密接にかかわっています。約4千年前頃の大規模な寒冷化の影響で、北方に住んでいた畑作を中心とする民族が南下して長江流域に移動したことがわかってきました。この民族が漢族のルーツに当たります。そして、長江流域の原住民族と同化していきますが、それを嫌って西や南に多くの原住民が移動しました。一部は海を渡っていまの台湾に移動したとされています。そうしますと、海を渡って日本に至ることも十分考えられます。苗族は稲作が中心で、太陽と鳥を信仰しています。鳥の象徴として鳳凰があります。一方、いまの漢族は龍を信仰します。これを聞いてみなさん、ふと思いませんか? 皇室のルーツは天照大御神(アマテラスオオミカミ)で太陽神です。神社の御神輿には天辺に鳳凰がいます。神武天皇を熊野から大和建国の地である梶原に導いたのは八咫烏(ヤタガラス)でした。そして宮中行事に稲を植える新嘗祭(ニイナメサイ)があります。

 それでは結局、皇室のルーツは中国ではないかと思われますが、ここで私の話は終わりません。古事記や日本書紀には、高天原(タカマガハラ)に住む天照大御神の孫にある瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が葦原中国(アシハラナカツクニ)である地上に天孫降臨した際に、建速須佐之男命(スサノオノミコト)の子孫に当たる出雲に住む大国主神(オオクニヌシノカミ)から平和裏に国を譲リ受ける、いわゆる「国譲り」が行われたと記されています。ちなみに、瓊瓊杵尊のひ孫に当たるのが神倭伊波礼毘古命(カムヤマトイワレビコノミコト)こと神武天皇です。最近の縄文遺跡の発掘から、三内丸山遺跡がある本州北端と、出雲だけでなく翡翠(ヒスイ)が取れる糸魚川流域などとも海路による貿易が盛んに行われていたことがわかりました。高天原が起源の瓊瓊杵尊と縄文人と交流のあった大国主神との国譲り。八百万神(ヤオヨロズノカミ)は縄文から生まれた信仰です。歴代の天皇はその代表である現人神(アラビトガミ)とされています。皇室が引き継ぐ三種の神器は、天照大御神の御神体とされる八咫鏡(ヤタノカガミ)と、八尺瓊勾玉(ヤサカニノマガタマ)、そして建速須佐之男命が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治した際に得た草薙剣(クサナギノツルギ)です。勾玉は翡翠から作られます。出雲では銅が多く産出され、草薙剣は銅剣とされています。また最近、出雲の荒神谷遺跡(コウジンダニイセキ)から358本と大量の銅剣が発掘されました。

 さて、大昔の話はいくらでも造り話として受け継がれ書き換えられ、今日まで伝えられたとすれば、伝承や書籍だけでは裏付けがとれませんので、言い換えれば、勝手気ままに伝えることができます。ここが科学技術と違うところで、好きなことを言っても検証できませんので、ある意味うらやましいところです。でも、最近、ウソがつけない決定的な証拠が知られるようになりました。それが遺伝子です。遺伝子は生物が引き継ぐ暗号のようなものですが、こればかりは書き換えることはできません。上記の話を遺伝子解析と照らし合わせると面白いことがわかります。その中でも、Y染色体ハプログループと呼ばれる男性の遺伝子を追っていくことにより、人類の誕生から移動の軌跡が見えてきます。もともと、現在の人類の起源とされるホモサピエンスはこの遺伝子解析により、約20万年前にアフリカで出現したことがわかりました。その後、Y染色体が突然変異して分化しながら、大陸を東や西へと移動します。縄文人の起源は約3万年前に確立されたD1a2aグループで、大陸(もしくは海?)を東に移動して、まだ陸続きだった東端に移動したと考えられます。その後、約2万年前から始まった温暖化による海面上昇で、東端に島国が形成されて、それがいまの日本です。そんな日本列島には日本人固有の遺伝子が特に東日本や沖縄、そしてアイヌ民族に多く分布しています。なお、D1aグループはチベットやモンゴルにも多く分布しています。

 合わせて、日本にはO1bグループがD1a2aグループの次に分布しています。特に西日本にはD1a2aグループよりも多く分布しています。このO1bグループはもともと長江流域の原住民族に多く分布していたことが明らかになっています。原住民族と同化した北方民族は同じOタイプですが、O2グループがその起源です。現在の中国人の半数以上がO2グループです。さらには稲も遺伝子解析されており、日本の稲の遺伝子は朝鮮半島にある遺伝子とは異なり、長江を起源とする遺伝子と一致しました。稲が弥生時代に朝鮮半島から伝わったという説は完全に否定されます。どうでしょうか? 盗人などいないと言っていた苗族の人たち。利他の心である大和魂を持つ縄文人。それらを起源とする人たちとの間で交わされた国譲り。これらの人たちから引き継がれている三種の神器と皇室。日本人のルーツについて、みなさんも想像を巡らすことができましたでしょうか?まだまだ書き足りないのですが、まだまだ知識不足を実感していますので、今後も引き続き情報収集するつもりです。文中にカタガナが付されている漢字は、4年前まではまったく知りませんでした。4年前から始めた読書で勝手気ままに読んだ本の数も三桁になって、それらの本に書かれていた内容を俯瞰すると、ここで書いたような話になりました。なぜか「歴史」の深みにどんどんはまってしまっている、今日この頃です。残念ながら、今の日本の歴史教科書ではいっさい教えられていません。