俯瞰力について処世術について日本の技術力を俯瞰日本人再考

日本の技術力を俯瞰

 これまでに、ニューオリンズ、ヒューストン、サンアントニオ、フェニックスなど、米国の南方で開催された国際会議に出席したことがありますが、いずれも、気温が30度(35度?)以上ある暑いところです。当然暑いだろうと、半袖シャツで出張しますが、なぜか外を歩くビジネスマンは上着を持っています。みなさん、身だしなみに気を遣っているのだろうと好意的に思いながら、立派な国際会議場の中に入った途端、あまりの寒さに驚いてしまいます。最初は外が暑いのでそのギャップだろうと思っていましたが、そうではなくギンギンに冷やしていることを知りました。ビル内があまりにも寒いので、みなさん上着を持っていたことがわかりました。日本でしたらば、クールビズとか省エネを掲げて、室内の温度を28度に設定することを推奨したりしていますが、何のことはない、米国では無縁の世界です。エネルギー問題がどうのこうのとか言う前に、やるべきことがあるだろうと日本人の1人として感じました。

 エネルギー資源を節約するという意識は,それを産出する国々では当然薄いでしょう。日本は石油や天然ガスなどのエネルギー資源はありませんので、輸入に頼っており、必然的に節約志向が強まります。その代わりに工業製品を輸出して利益を得ています。したがって、工業製品にもエネルギーを節約する思想が必然的に入ってきます。エアコンの設定温度が0.5度刻みで設定できるのが、他の国の製品にもあるのかどうかはよく知りませんが、それは日本が置かれている現状を如実に反映している結果です。もともと、技術の発展は戦いの歴史と完全にリンクしています。石、弓、投石機、銅剣、鉄剣、火縄銃、マスケット銃、ライブル銃、大砲、機関銃、戦車、戦闘機と戦いの技術は進化してきました。日本では、ポルトガルから種子島に火縄銃が伝来されましたが、それを日本人はすぐ吸収して、より性能の良い銃を作り上げました。日本が、ハバナ、インカ、アステカのようにはならなかった理由です。

 日本人が他国の技術を吸収してすぐ改良できるのは、ひとえに縄文の時代から培われてきた器用さにあります。地震・津波や火山噴火、河川の氾濫など自然災害が頻発して、さらに夏と冬があり、食料を確保するのに迫られた日本人ならではの必然性があったと想像します。小動物を捕獲する技術、海産物を収穫する技術、農作物を作る技術、そしてそれらを保存する技術など。いろんな種類の食料を食しているうちに、世界にも類がないほどの食文化が形成されました。戦いの技術も、ある意味生きるために必要な技術ですが、日本は幸いにして島国であり、これまでに侵略されたことがないことから、戦いの技術以上に、この島国で生きるための技術が発展してきたものと想像します。そこが大陸の人たちとは決定的に違いところでしょう。生きるためにいろんな技術が発展した結果、何百年と続く、いわゆる老舗と呼ばれるお店や、世界唯一の技術を持った中小企業などもたくさんあります。戦争に直結する、戦闘機、戦艦、戦車、などの技術は他国でも進化します。スマホやPCなども他国で作れます。でもふたを開けてみれば、その中の要素部品には日本製がたくさん使われています。小型の電子部品やスマホのレンズや画像素子など。そして半導体を製造する装置自身もほとんどが日本製です。

 日本の技術はすでに中国や韓国に抜かれたと思わされているかもしれませんが、とんでもない話です。もちろん、誰でも簡単に作れる物、たとえば、PCや太陽光パネルやEV車などは、どこの国でも大量に生産販売して、金儲けはできるでしょう。でも、開けやすいお菓子の梱包、外れ落ちないペットボトルの蓋、いろんな種類のカップ麺、ウォシュレット付トイレ、ハイブリット自動車、高速でも揺れずさらに座席が自動で回転する新幹線、大型ガスタービン・蒸気タービン、LNGタンカー、ノイズの出ない潜水艦、免震構造の高層ビルなど、日本人でなければ考えない、日本でなければ発想も出ない、そして日本人でなければ作れない技術がたくさんあります。ひとえに縄文時代から続く、日本人が持っている器用さゆえのものづくり技術であり、まさにそこに、Made in Japanが世界中で信頼されている秘密が隠されています。ただ、このような付加価値の高い物をどうやって売るかという問題が最後に残ります。価格で勝負すると、これらはすべて過剰サービスに当たるかもしれません。高くても買いたくなるようなMade in Japan技術を育成することが、まさに持続可能な社会を日本で実現する鍵であると、私は思います。