俯瞰力について処世術について持続可能社会(SDGs)を俯瞰

持続可能社会(SDGs)を俯瞰

 地球が温暖化しているから、温暖化ガスを削減するため二酸化炭素を減らしましょう。2050年カーボンニュートラルを目指して、持続可能社会(SDGs)を実現しましょう。これが現在、世界共通の認識です。地球の平均気温が1度上昇すると、海面が2m以上、上昇するとされています。二酸化炭素を大量に排出する石炭火力発電は廃止して、太陽光発電を普及させなければならない。毎年開催されている気候変動枠組条約締約国会議(COP)で、各国の二酸化炭素の削減割り当てを決めています。日本では、現在全発電量の18%に当たる再生可能エネルギーを2030年までに38%にするエネルギー基本計画が策定されました。これは、太陽光発電や風力発電をいまの倍以上に増やすことを意味しています。そもそも日本は島国で国土の約80%は森林であり、平地は限られているため、太陽光パネルを設置するためには、家庭に設置するか、休耕地を利用するか、森林を伐採するなどが必要です。風力発電の風車を立地する場所も限られており、海上に設置する風力発電も検討されています。二酸化炭素を排出するガソリン車も止めて、EV車にすべきであると提唱されています。

 人類が地球上で持続的に生きていくためには、もっともなことだと誰でも思うでしょう。約2万年前に始まった地球温暖化では、1万5千年かけて海面が約140m上昇したとされています。百年で約1mずつ上昇していたことになります。温度上昇は約12度程度です。そうすると、気温が1度上昇すると海面が10m上昇したことになり、千年かけてとはいえ、それはそれで大変です。このときに、日本列島という島国も形成されました。COPではここのところ連続で日本は、「化石賞」を受賞しています。二酸化炭素の排出削減に消極的な国に、皮肉を込めてCOPに合わせてNGO団体が授与しています。でも日本の二酸化炭素排出量はCOP加盟国の中で約3%程度です。アメリカ、中国、インドの3カ国で50%を占めています。アメリカも受賞していますが、なぜか中国とインドは受賞していません。それでは、これから再生可能エネルギーが普及すれば、二酸化炭素の排出量は減っていくのでしょうか?カーボンニュートラルは、二酸化炭素排出量を完全にゼロにする「カーボンフリー」とは違います。森林の二酸化炭素吸収量を加味して、排出量を吸収量で相殺することができるレベルをカーボンニュートラルと定義しています。

 太陽光発電は、当然ながら日中しか発電しません。それでは夜の電気はどうしているのでしょう?さらには日中も、天候により発電量が大きく左右されます。東日本大震災以降、日本の原子力発電はほとんど停止しているため、現在の発電量の70%以上が火力発電に頼っています。化石賞を授与されてもしかたがない現状かもしれません。ところが、最近は太陽光発電の急速な普及により、日中ではすでに余剰電力が発生しています。発電電力が減少すれば、場合によっては停電を引き起こしますが、多すぎても、そのまま電力グリットに供給すると、場合によっては電気機器が破損する恐れがあります。したがって、天候の変化により変動した電力は平滑化する必要があります。まだまだ一般社会での認識が不足しているのですが、その変動を相殺しているのが、火力発電になります。中でも、ガスタービンと蒸気タービンからなるコンバインドサイクル発電がそれを担っています。仮に蒸気タービンのみからなる石炭火力発電を削減したとしても、コンバインドサイクル発電は必須な現状にあります。具体的には、夜は火力発電で電気を供給しているのはもちろんのこと、太陽光発電で余剰電力が発生しそうな日中でも電力を平滑化するため、ガスタービンの出力を落とした部分負荷運転が、まさにいま分単位で実施されています。

 もし、再生可能エネルギーを現在の18%から38%に増やしたとすれば、今後何が起こるかは自ずと見えてきます。太陽光パネルを増やせば増やすほど、二酸化炭素を排出するガスタービンへの負荷が増えてくるという、カーボンニュートラルには明らかに矛盾したことが起きてしまいます。また、電力の変動がより顕著になり、ガスタービンではもはや対応できなくなったとき、どのような事態になるのかも見えてきます。というよりは、日本で再生可能エネルギーを38%にするのは、現状の延長では限りなく不可能に近いことが、すでに見えています。そんな将来が見えている中に、さらにEVを導入したらどうなるでしょう?二酸化炭素排出量を削減するためにEVを導入するという話になっているのですが、家庭用のEVは日中に使用するのがほとんどです。そして夜に充電します。でも、家庭用の太陽光パネルからは、夜ですから直接充電できません。日中発電した電気をバッテリーなどの蓄電しておく必要があります。でも家庭では電気は主に夜に使います。結局、不足分の電力は火力発電所から供給された電気で賄うしかありません。EVが普及すればするほど、火力発電が必要になり、結局、二酸化炭素の排出量も増えることになります。大きな矛盾を秘めているのが、実はSDGsであることを多くの一般人が認識すべきでしょう。

 日本をカーボンニュートラルにする方法は唯一、水素社会しかありません。水素燃焼ガスタービンが実現すれば、カーボンニュートラルどころか、カーボンフリーが実現します。日本の周りには水が無尽蔵にあります。海水から水素を生成して、貯蔵する技術が確立されれば、日本はもはやエネルギー輸入国から、エネルギー輸出国になることができます。2050年までまだ25年以上ありますから、確実に実現するでしょう。