日記

屋久島が弱めた!?

 昔、JAXAの研究者から、台風を制御する方法を見付けて欲しいというトンデモ依頼がありました。当時横浜にあった地球シミュレータの研究グループも巻き込んで、研究予算も付いたので、地球シミュレータでシミュレーションしました。このJAXAのグループは人工衛星で太陽光発電をする研究をしているグループで、人工衛星からレーザーでそのエネルギーを地上に転送する研究をしていました。ただ、宇宙太陽光発電が実現するまでにはまだ数十年掛ることが予想されていたため、その繋ぎの研究として、レーザーにより台風を制御できないかと突飛押しもない発想を持って私のところに依頼が来ました。他にも何人かの大学の研究者に依頼したようですが、みんな断られて、最後に私のところに行き着いたようです。私も突飛押しもないことが結構好きなので、引き受けました。そして実際に熱源を台風の目に当たる部分に加えることでシミュレーションしてみたところ、台風はむしろ強まるという結果になってしまいました。

 この研究成果発表の時に、とある審査委員の先生から、「そんな神をも恐れぬ研究は直ちに止めろ」と言われて、この研究は終わりました。それから10年以上経って、実は最近また台風制御の研究が注目されています。私はいまでも、台風制御は可能であると思っていますが、私が直接やることはもうありません。そんなこともあったので、今回台風10号が屋久島を通過した途端に急に弱まったという話は、ものすごく興味があります。台風の目は台風の回転によって生まれます。高温の海面から蒸発した水蒸気が上昇気流となり上空に上昇するにつれて、気温が飽和蒸気温度より低下することで水蒸気が液滴に凝縮して、これが雲になります。雲は地球のコリオリ力により北半球では反時計回りに回転しながら、その遠心力により空気より密度の高い雲は外側に移動して、中心部には雲のない台風の目ができます。竜巻の原理もこれに似ています。したがって、その液滴への凝縮をなんらかの方法で制御できるのではないかと考えたわけです。

 屋久島の高さは1900mです。台風10号はちょうど屋久島の上を通過しました。屋久島がタダの平地だった場合にはたぶん、弱まることはなかったと思います。この高度1900mというところが、なにか鍵を握っているように思いました。これから台風制御を研究する際の重要な知見になりそうです。あと20才くらい若かったら、またやってみたいと思ったかもしれませんが、光陰矢のごとしと...