俯瞰力について俯瞰力(ふかんりょく)

俯瞰力(ふかんりょく)

 二冊目の本が出来上がり、少し書き疲れたこともあり、一息ついていました。しばらくすると、また少し意欲も出てくるようで、また書き始めようかと思っています。さて、今年はどんなテーマで書こうかといろいろ考えると、またラビリンス入りしてしまいそうですが、前々から、「俯瞰力」というものに興味があったので、とりあえず、この俯瞰力を切り口にして、勝手なことをまた書き始めようと思います。これまでにもすでに、「ロジカルシンキング」や「人生はシミュレーションゲーム」などで俯瞰力には触れてきました。私がもともと、この俯瞰力を意識するようになったのは、大学の教員になってからです。大学では毎週のように会議があります。そうすると、会議では大量の資料が配付されます。するとどうでしょう、どうしても誤植をすぐ見つけてしまいます。みなさん、たぶん気が付いているのだろうと思いながら、誤植のある部分の議題に入るのですが、あいにく誰一人その誤植を指摘しないので、仕方なく私が指摘するということが過去に多々ありました。みなさん、遠慮して、指摘しないのだろうと思ったりしていたのですが、どうも最近はそうではないのかもと思うようになりました。

 以前から書いているように、私の趣味の一つにプログラミングがあります(ありましたが正確?最近はやっていない)。大学1年生の時に買ったNEC PC8001で、プログラミングにはまってしまい、月刊アスキーに掲載されているゲームプログラムを必死で入力していました。その頃は、BASICというプログラミング言語が主でしたが、それをきっかけに、Pascal、アセンブリ言語、さらにはマシン語などにも深い入りしていきました。COBOLと呼ばれている事務処理言語のアルバイトをしていたこともありました。大学の研究室も、プログラミングができる研究室を探していたところ、1カ所だけあることがわかり、結局、そこに所属して、今日まで居座ってしまいました。研究室で使用した言語は、科学技術用言語であるFortranです。いまある言語と比較すれば古典的で骨董品に近い言語ですが、スパコンを使った科学技術計算ではいまでも現役です、というよりは主流です。もともと、ゲームプログラムから入ったせいもあるのか、研究でプログラミングをしている時と、ゲームプログラムを入力していたときは、まったく同じ脳内活動でした。「好きなことをやる」で書いたように、好きなことをやっていると、脳内にドーパミンがバンバン出てきます。これの度が過ぎると、いわゆる中毒状態に陥ります。

 とにかく、プログラミングを始めると、やめられなくなります。朝から晩までぶっ続けてやっていたこともあり、夜に気がついて、やめようと思ってやめた瞬間、頭がぼーとしてきます。2,3日続けると、肩が痛くなり、頭痛がしてきます。これはいつものことで慣れてしまいましたが、最後には吐き気もしてきて、これはまずいとやめたことも過去に3回ほど?ありました。プログラミングに費やす時間の90%以上は、虫(Bug)取りです。いわゆる間違った命令探しです。私の研究で作成しているプログラムは、数えたことはありませんが、数千行から成り立っており、その1行1行に複数の命令が含まれます。極端に言えば、数千行ある命令の中で、1カ所だけでも間違いがあると、プログラムが実行できないこともあります。たとえば、プラスとマイナスの符号を間違えただけとか。そのようなBug取りを、大学1年の時から、気がつくと40年近くやってきたことになります。10年以上同じプログラムを見ていると、プログラムが頭の中に入ってしまい、どの部分に何があるかがプログラムリストを見なくてもだいたいわかります。すごいな、と思われるかもしれませんが、四書五経、聖書、お経などでも、毎日同じものを繰り返し読んで、10年経てば、みんな暗記してしまいます。ですから、別に普通のことです。

 この40年間の繰り返しが、プログラミングだけに留まっていたのであれば、俯瞰力という言葉も意識することはなかったかもしれません。でも、なぜか生活全般にその影響が波及していることを、最近、時々感じています。ANNO1800で紹介したように、ゲーム好きが功を奏して、その後、シミュレーションゲームにはまり、三国志、大戦略、SimCity、Civilization、そして、ANNO1404、と来て、ANNO1800に至っています。三国志、大戦略、SimCityはほぼ毎シリーズ購入して、Civilizationは、主にIVにはまってましたが、いまはいずれも飽きてしまい、現在、もっぱら、ANNO1800です。「人生はシミュレーションゲーム」のなかでも紹介しましたが、とにかく、同時に把握しておくべきパラメータの数が半端なくて、そのうち1つでも見落としていると、ゲームの形勢がだんだん悪くなります。多変数の連立反応方程式を解いている時と、傾向がよく似ています。というよりはそのものかもしれません。このようなことを40年もやっていたせいか、世の中をついつい多変数系で見てしまいます。もはや本能的に、そのすべての多変数をできるだけ把握しようとしてしまうのかもしれません。こんな自分が、俯瞰力という切り口で見た世の中について、まずは勝手に気ままに書いてみようかと思っています。途中で気が変わるかもしれませんが。