今、エネルギー危機?日本人再考

今、エネルギー危機?

 良かれと思ってやっていることが、結果的に間違いだったということは、結構あります。良かれと思って、地球温暖化を防ぐため脱炭素化を進めましょうと問いかけられれば、誰も反対はできないでしょう。約2万年前から始まった地球温暖化では約100m海面が上昇して、その結果、日本列島が形成されたことがわかっています。ただし、これは1万年もかけて続いた地球温暖化の結果であり、10年、100年単位でみれば、1m程度の上昇になります。二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの増加で、地球の気温が上昇してこの海面上昇が加速されるから、地球温暖化を防がなければならないと、世界中で脱炭素化が叫ばれています。でも、地球の長期的な気候変動の動向はむしろ地球冷却化にむかっています。いずれにせよ、脱炭素化のため、再生可能エネルギーを増やして、化石燃料の使用を減らしていくというのが、世界中のトレンドであり、日本もつい昨日に、2030年までに再生可能エネルギーの割合を現在の18%から倍の38%に増やし、化石燃料による火力発電を減らすというエネルギー基本計画を決定しました。

「何の下心もなく」良かれと思ってやっているのでしょうから、その方針に反対はしません。でも現実は、「太陽光発電が増えるほど」でも書いたようなことになっています。2030年に向けて、今の形態の送電方法のままでは、この状況はさらに悪化することは間違いありません。「今の形態の送電方法」というのは、太陽光発電による電力を同じ送電網で送電しているため、電力の負荷変動が起きています。その送電網から切り離して、一旦蓄電するとか、水素製造に使い貯蔵してそれを発電に使うとかすれば、話は違ってきます。現状のままでは、太陽光発電が増えるほど、そのバックアップ電源は必要になりますので、結局、火力発電は止められないのが現実です。少し考えればわかるはずなのですが、どうもわかっているような、わかっていないような。でも世界中、脱炭素化に向けて、再生可能エネルギーを増やし、火力発電を減らす方向に向かっています。いずれ 太陽光発電が増えるほど で書いたことが顕在化するだろうと予想していました。

 ところが驚いたことに、すでに顕在化しています。コロナによる1年半の自粛から回復し始めた世界で、これまで低迷していたエネルギー需要が急激に増えた結果、世界中でエネルギー不足に陥っているというニュースが聞こえてきました。なぜ急に?別に止めていた火力発電所を再稼働すればいいだけなのですが。ただ、再生可能エネルギーを増やすのに合わせて、火力発電所を取り壊したりしたとすると、結構たいへんなことになりそうです。イギリスは風力を主力発電にする方向で進めているようですが、最近無風状態のため、発電量が20%も減って、エネルギー不足に陥っているようです。特にEUでは再生可能エネルギーの大量導入を進めていますが、ここにきてエネルギー不足になり、さらに天然ガスの値段が大幅に上昇したため、代替エネルギーとして石炭を急きょ調達し始めたそうです。石炭火力発電所を再稼働するということでしょうね。日本は、「化石賞」を授与され、EUの女の子からけなされています。そもそも、化石燃料の使用を減らすため進めている再生可能エネルギーの導入なのですが、なんか矛盾していませんか?

 日本は現在、他国より高い天然ガスを長期契約させられていますので、価格高騰の影響はあまりなさそうですから、当面はエネルギー危機にはならないと思います。ただ、この長期契約もそろそろ切れるようですので、その先どうなるかは私もわかりません。幸い、再生可能エネルギーの導入が進んでいるといっても、日本ではまだ18%ですので、この先良かれと思ってやっていることが、必ずしもそうではなかったと気が付いたら、方向を柔軟に修正していただきたいと願っています。そうしませんと、日本でも近い将来に、停電が頻発する事態が起こり得ますね。