ソフトパワー俯瞰力について処世術について日本人再考

ソフトパワー

 テレビはウルトラマン、アニメは初代ガンダム、映画はスターウォーズ。私が小学校から大学生までに見ていたもので好きだったものです。もちろん、漫画(印刷版)もたくさんありましたが、私はあまり読みませんでした。戦いものばかりですが、それはいまの鬼滅の刃やワンピースなども同じです。戦いがあってヒーローがいないと、そもそもあまり売れないでしょう。映画は、特撮などもからめた実写が主流です。実際の人間が出てきます。でも、アニメは創作です。まさに、日本独自の文化です。フランスから短期の留学生をこれまで数名受け入れましたが、日本に来たい理由を聞くと、例外なく、日本のアニメが好きだからと答えます。ドラゴンボールやエヴァンゲリオン、あと萌え系、など。毎週のようにアキバに行っていた留学生もいました。最近もたくさん人気のアニメがあり、アニソンなども流行していますが、あいにく私自身あまり詳しくないので、ここでは触れません。

 ジブリの映画も好きでしたので、ほぼ全作見ています。ナウシカなどは何回見たかわからないほど見ましたが、いつ見ても名作だと思います。まさに宮崎駿監督の天才的な才能ゆえの作品ですが、これと同じものを外国人が作れるかといえば、それは無理でしょう。日本のアニメが特殊なのは、30分の動画を作るのに1万枚以上作画しなければならないところです。こんな根気のいることをやろうとする民族はたぶん他にはないでしょう。いまでこそ、CGを多用したアニメが作られていますが、ジブリもそうですし、新海誠監督のアニメ映画も、たぶん同じものをCGで再現はできないと思います。たとえば、「君の名は。」の光と影の表現などはCGで再現するとリアルになりすぎるかもしれません。いずれにせよ、みなさん純粋にアニメが好きで楽しんでいるからこそ、大ヒットしているわけで、そこに国境はありません。

 あいにく、ここでの話は、アニメ自体の話ではありません。アニメやゲームはいわゆる、「ソフトパワー」です。日本のソフトパワーがすでに世界を席巻していることはよく知られています。一方、お金や武力などを使ったパワーが「ハードパワー」になります。いくらアニメで楽しんでいても、ハードパワーで首根っこをつかまれてしまい、最後はハードパワーに支配されるであろう最近の世の中です。たしかにそうかもしれません。でも心の中まで支配することはできないでしょう。ハードパワーを駆使している支配者でも、支配しきれない世界があります。それが信仰、たとえば宗教です。たとえ金の亡者でも、いずれは死を迎えます。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は同じ唯一神を信仰しています。死後に最後の審判を受けるため、ひたすらその時を待ち続けることになるそうです。そして教えに反した人たちは、地獄に行きです。たとえば、旧約聖書にはモーセの十戒が記されており、「盗んではいけない」、「人を殺してはいけない」、などがあります。どうも一部の人たちは、確実に地獄に行きそうだと思うのは私だけでしょうか?

 ソフトパワーは、あくまで仮想現実の世界が舞台ですので、現実の人を殺すことはありません。一方、アニメを見たからと行って、現実の世界に直接役立つとも限りません。でもアニメなどソフトパワーは、人の首根っこをつかむ代わりに、人の心をつかむことができます。日本のソフトパワーは、すでに世界中の若者の心をつかんでいます。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教などの強い信仰を持った人たちを、武力で支配できないのと同じく、好きになったアニメをその人の心から奪うことはできません。日本のソフトパワーはすでに、信仰の域に達しているのかもしれません。世界中の若者の心をわしづかみにしているソフトパワーを、もっと進化させて、若者のみならず、老若男女の心をつかむことができれば、3大宗教と同じ心の団結が得られるのではないかと、私は思います。心の同調は日本民族が得意とするところです。戦略的に言えば、世界中の若者の心をつかめば、日本人の存在も無視できないでしょう。