選民思想はどこから
エコノミックアニマルといわれていたときがありました。朝から晩までお金稼ぎに邁進する日本人を比喩した呼び方でした。エコノミックヒューマンでいいのに、なんでアニマルなのか。本当にアニマルだと思っているのでしょう。当然、人間もアニマルですが、ここでのアニマルには人間の意は含まれていませんね。まさに、家畜を暗示した呼び方です。皮肉を込めた呼び方です。褒め言葉でないことは誰でもわかります。イエローモンキーという差別用語もありました。白い人たちの思想には、選民思想があり、白い人が優れている、ということです。日本人、そしてアジアに暮らす民族は黄色ですし、アフリカに暮らす人たちは黒いです。どこでそう色が変わったのか私もよくわかりませんが、最新のDNA解析では、アフリカで誕生したホモサピエンスが何万年?か何十万年?かけて分化していったとされています。元々は同じところから始まっています。でも、肌の色が違っていきました。それではそのうちのなぜ白い人たちだけが、どうして選民なのでしょうか?もともと始まりは同じなのにもかかわらず。実は、白い人たちのたどった歴史を見ると、その答えが見えてきます。
大陸ならではの宿命があったと私は理解しました。ヨーロッパでも、もともとはギリシャ神話にありますように、多神教が信仰されていました。そんな中で、紀元前2千年頃、メソポタミア地方に住んでいた唯一神を信仰するアブラハムは、百歳で子供を授かり、イサクと名付けましたが、神はアブラハムの信仰心を確かめるために、イサクを生贄にするよう命じました。アブラハムは神の啓示に忠実に従い、我が子であるイサクをまさに殺そうとしたとき、神はアブラハムの信仰心を確かなもととして、それを止めました。その後、神はカナン(いまのヨルダン辺り)を信仰の地として与え、イサクの息子、ヤコブが生まれ、ヤコブの息子が12人生まれ、これがイスラエル十二部族の始まりであるとされています。その後の話も旧約聖書に書かれていますが、話が長くなるので、詳しい話はしませんが、興味がある方は調べてください。史実かどうかは定かではありませんが、この十二部族の運命がたいへんでした。移住先のエジプトで奴隷になったり、カナンに戻りイスラエル王国を建国しましたが、その後に十二部族に分裂してそれぞれ国が建国されます、その後、アッシリアやバビロニアなどに侵略されて奴隷にされて連れ去られたりして、紀元70年に最後に残ったユダ王国がローマ帝国に支配されて滅亡しました。1948年にイスラエルが建国されるまで、十二部族は世界中に離散してしまいます。この間、新たにキリスト教が創始し、613年にはムハンマドがイスラム教を開宗しましたが、その後にはスンニ派とシーア派に分裂したり、キリスト教もカトリックとプロテスタントに分裂したりと、いろんな宗派に分かれていきます。もちろん、ユダヤ教もいろんな宗派に分かれました。
私の拙い知識で、宗教の歴史など語れるわけもなく、それをするつもりはありません。でもこれらの宗教は、もともとユダヤ教で信仰していた唯一神、ヤハウェと同じ神様、イエス・キリスト、アッラーを信仰しているのです。中世イスラム圏では十二部族から派生したユダヤ人がイスラム教徒と共存していた時代もありました。でも同じ宗教の中で違う宗派で争ってきた歴史もあります。どうして仲良くできないのでしょうか?日本人ならそう思いませんか?そこに、日本人とそれ以外の決定的な、そして本質的な違いをつくづく感じます。同じ神様を信仰しているにもかかわらず、お互い、異教徒を弾圧して、残虐な殺し合いをしたり、負けた方を奴隷にしたりと、そのような歴史を延々と繰り返しています。憎しみは募るばかりです。八百万の神とともに生きる日本人を異教徒として弾圧するのならまだしも、なんで同じ神様が、同じく信仰しているそれぞれの宗教間で争いを起こさせるのかが、私には不可解です。神様が同じでも、民族が違うからでしょうか?たしかに、キリスト教は、ヨーロッパ発祥ですから、白人が多いのでしょうが、いまはいろんな人種が信仰しています。もともと、ユダヤ人は十二部族から始まる民族で、白人ではなくセム族といわれているアラブ系の人たちです。一方、いま一般に目にする白人のユダヤ教徒は、セム族のユダヤ人ではなく、アシュケナジムと呼ばれている東ヨーロッパに起源ある人たちといわれています。
日本人が、島国で1万年以上暮らしていたのに対して、広い大陸で3万年以上暮らしてきた様々な民族間で、いざこざが絶えないのは、容易に想像がつきます。生きるためには食糧が必要です。人口が増えてくれば、食糧を確保するために、縄張りを造ったり、他の縄張りに侵入したりしたことでしょう。仲良くやりましょうなどと悠長なことをいっていたら、逆に乗っ取られて、殺されるか、奴隷にされるか、飢え死するかもしれません。実際そのようなこともあったことでしょう。3万年の間にDNAは分化していき、見た目も違う、色も違う人たちが生まれ、民族としての単位が形成されました。ただ、その民族の単位は必ずしも大きくはありませんので、民族単位で争っていたら、紛争ばかりで落ち着くことができません。その民族を大きく束ねる単位として宗教が生まれ、より大きな単位になることにより、異教徒よりも強くなって生き残ってきたのか? 大陸で生きていくために、必然的に、武装化、知能化、排他的、性悪説、な民族が形成され、それに勝ち抜いてきた白い人たちが、自分たちこそ優れた人種であり、民族であると考えるようになり、選民思想が生まれたのかもしれません。でも、たまたま白い人たちが勝ってきたから、そうなったのかもしれません。もしかしたら、歴史の歯車が少しずれて、黄色い人たちや黒い人たちが、白い人たちを奴隷にしていても、決しておかしくはなかったかと想像します。島国に閉じ込められて生きてきた日本人とは、相いれない大陸で生きた人たちです。日本は島国で本当によかったと私は思います。