研究論文の書き方
大学院の修士課程で2年間、さらに博士課程で3年間研究して、修士論文と博士論文を執筆します。博士論文の場合には、それに至る過程で、研究論文を外部に複数発表しなければならない場合が普通です。これから初めて論文を執筆しようとしている学生もいるかと思います。論文の構成は、まず、緒言として背景や研究目的を書きます。次に第2章として、研究の方法、第3章から結果、そして最後に結論ならびに参考文献となります。お世話になった人への謝辞を付けます。先輩から引き継いで研究すると、理論や実験いずれにおいても、手法や実験装置はすでに出来合いのものを改良する場合も多く、また結果も比較的すぐ得られたりします。ところが、その手法や実験装置の詳細がまだわかっておらず、さらにはそれらの背景もまだよくわかっていない状況ですので、自分がはたして何の目的でやっているかわからないのに、なぜが結果だけは得られている状況になります。というよりは、そのような場合がほとんどかもしれません。
研究室のゼミなどで研究進捗について報告しても、結果の部分が大半で、その周辺が薄っぺらな報告が研究を始めた頃は続きます。けしからん、もっと勉強しろ、と怒る指導教員もいるかもしれませんが、別に怒らなくても、「これから背景なども勉強しましょうね」と優しく助言すれば、学生も勉強するはずです。そうして、結果が得られれば、背景や手法に立ち返って理解を深めながら、2年も研究していれば、立派な修士論文を書けるようになります。さて、研究の成果を、学会などでも発表しようという場合には、学会の論文を執筆することになります。普通は緒言から書き始めるのかもしれませんが、そうすると、後でつじつまが合わなくなってしまう場合があります。得られる結果は結構水物ですので、当初想定していた結果と部分的に違ってきたりします。そうすると、緒言を一部書き換えなければならなくなります。特に、ちゃんとした英語論文などに投稿する場合には、Introductionの記述はかなり神経を使います。既存の研究を必要十分に引用しないと、その時点でレビュアーから指摘されます。
私の場合、結果からまず書き始めます。その際に結果で必要な計算結果の図をまずはすべて揃えます。結果がすべて、ということになりますね。その後、手法の部分を書いて、結論を書いて、最後に緒言を書きます。緒言でできるだけ多くの既存研究を引用しますので、参考文献もおのずと最後に付け加えることになります。したがって、緒言は結果に合わせながら執筆します。論文はなにも、緒言から書かなければならない理由はありません。むしろ、信頼できる結果が得られないと論文自体書くことができませんので、まずは結果からです。信頼できる結果を得るためには、手法をよく理解する必要があります。手法や結果に新規性がないと、論文は出せませんので、既存の研究をよく調べる必要があります。研究を何から始めて、論文をどこから書き始めるかはともかく、緒言、手法、結果、そして結論と参考文献、いずれもバランスを欠くことなく執筆する必要があるということですね。