太陽光発電が増えるほど日本人再考

太陽光発電が増えるほど

 私の研究に直接関係した話を書きます。これから夏になり、お日さまもがんがん照りだすと、太陽光発電も絶好調です。でも、曇りや雨になると発電量は急激に減ります、夜は発電しません。地球温暖化や気候変動に悪影響を与えるといわれている二酸化炭素の排出量を、2050年までに実質ゼロにするため、世界中の多くの国が足並みを揃えて、取り組んでいこうとしています。それの是非については論評は避けますが、現実的にすでに起こっていることとして、太陽光発電が増えれば増えるほど、火力発電が必要になります。なんで?そんなわけねーだろう?と思いますね。それでは、世界中が太陽光発電のみで電力を賄う世界を想像してみましょう。世界中の電力を賄えるだけの電力量ですから、日中は余ってしまいます。一方で、夜はゼロです。

 電力は一定量を供給する必要があるので、多くても少なくてもだめです。そうしますと、余った電力は貯めておき、夜に使うということは容易に想像つきます。バッテリーを常備すれば解決するだろうと思いますね。たしかに、家庭単位ではすでに実現されています。でも今後、電気自動車が普及しだすと、通常は日中使用しますから、夜に充電しますね。そうしますと、夜は家の電気と電気自動車の充電をバッテリーで賄わなければなりません。それでもそれが可能な未来はきっと来ると私も思います。ただ、電力は家庭だけでなく、産業・商業にも必要です。たとえば、新幹線をバッテリーのみで走らせることは可能だと思いますか?そんな電力を太陽光だけで充電することはちょっと無理そうです。自動車工場や大規模商業施設などの電力もバッテリーのみで賄うことは現実的ではありません。そもそも、太陽光パネルやバッテリーは経年劣化しますので、いずれはごみになります。環境にやさしいとは決していえません。

 もっと深刻な問題は、日中でも気候は目まぐるしく変化するため、太陽光発電による電力量は分単位で変化します。それでも電力量は一定供給しませんと、電気機器が壊れたり、停電してしまいます。この分単位の変化、いわゆる電力負荷変動を平坦化しているのが火力発電です。特に、最新型の火力発電であるコンバインドサイクル発電では、ガスタービンを回したり止めたりして、電力一定供給に必死で対応しています。本来の使用方法とは異なる酷な使用が強いられています。国連気候変動サミットでは、日本は毎回のように「化石賞」(化石燃料を大量に使っている国に対して授与する皮肉を込めた賞)を受賞していますが、とんでもありません。日本の数倍も二酸化炭素を排出している複数の国があります。日本だけが二酸化炭素排出量を減らしても、世界全体の排出量削減にほとんど貢献しません。

 コンバインドサイクル発電は天然ガスを燃料として使用しており、化石燃料である石炭を使う石炭火力発電に比べて、二酸化炭素の排出量は約半分です。いまのところ、この電力負荷変動に対応できるのは、揚水型水力発電と火力発電だけです。水力発電は自然を破壊、原子力は安全性に問題があるとして、新設されることはなさそうですから、今後の頼みの綱は、まさにコンバインドサイクル発電になります。安全性が問題だから原子力発電を全廃したドイツは、実はとなりのフランスから電力を買っています。フランスの電力の約70%は原子力発電により賄われています。日本がスケープゴートにされているのを、よく念頭において、地球温暖化や気候変動についてもっと深く考えてみましょう。コンバインドサイクル発電の燃料に水素を使う研究も行われています。これが実現すれば、二酸化炭素排出量削減に大いに貢献できます。太陽光発電を電力グリットから切り離し、それでまずは水素を造って貯蔵するというアイデアもあります。

太陽光発電が増えるほど」への1件のフィードバック

コメントは受け付けていません。