ミュンヘン40日その1回想録

ミュンヘン40日その1

 これまでに2回、海外に長期滞在したことがあり、最初は1992年に10か月間スタンフォードに滞在して、2度目は2003年に40日ほどミュンヘンに滞在しました。スタンフォードについてはまた改めて回想することにして、ミュンヘンに滞在した時のことを思い出しながら書いてみます。2003年の9月から10月にかけて、ミュンヘン工科大学のS先生の研究室にお世話になりました。S先生は私の研究分野で著名な先生です。この時期を選んだのは、実は下心があり、ちょうどオクトーバーフェストの開催時期と重なっています。オクトーバーフェストは皆さんご存じかと思いますが、世界的に有名なミュンヘンの恒例行事で、いわゆるビール祭りですね。帰りのお土産の量なども考えて大きなスーツケースを購入しました。さすがに40日分の下着を持っていくことはありませんので、1週間程度の下着を持って、あとは現地で洗濯することにしました。

 ミュンヘン空港で入国して、市内に移動するため、トラムを利用しました。ところが、チケット売り場が見当たりません。わけもわからず、チケットなしで乗り込んで、気が付いたら目的の駅についてしまい、そのまま降りました。儲けたような、後ろめたいような気持ちになったのですが、後でわかったのはチケット売り場は確かにありました。ただ、日頃乗客は定期券を持っているようで、チケット売り場で購入する姿はほとんど見られません。それとともに改札がないため、故意に無賃乗車している乗客も結構いるようです。幸い私はチェックされなかったのですが、チケットの抜き打ち検査を実施しており、無賃乗車がばれると運賃の5倍?の罰金を支払わされるようです。たしかに、パリで会議があった際にも、地下鉄を1区間乗り過ごして降りたところ、待機していた警官?に止められて罰金を支払わされたことがありました。日本でしたらば、清算で済むはずなのですが。

 宿泊先は、ミュンヘンの中心から少し離れた町にある、S先生が手配してくれた長期滞在型のホテルです。ホテルとはいっても、ヨーロッパによくあるB&Bにようなものです。でも部屋には一通りの設備があり、キッチンもありました。さらには食器もいろいろ揃っていました。結局、40日滞在して、宿泊代は10万円程度でしたので、1泊当たり、2500円ですから、格安のホテルでした。直接外に出ることができる部屋でしたので、フロントを通る必要がありませんでした。日本ではなかなか見つけられない宿泊施設です。朝食は付いていましたので、毎朝食堂に行って食べていました。いわゆる典型的なコンチネンタルブレックファーストです。パン、ハム、ソーセージ、チーズが中心で種類は結構ありました。ただし、野菜がほとんどありません(でっかいキュウリのスライスみたいなものはあったかも)。リンゴとかバナナはあったかもしれません。それから、私はコーヒーを飲んでいました。これは入れたてのコーヒーでしたので、結構気に入っていました。パンは、日本の食パンとは違い、ライ麦パンのような白くないものが多く、それをスライスしたものか、丸く表面が堅いパンです。最初の朝、私はごく普通にスライスされたパンにジャムやバターを塗って、ハム、チーズはお皿にのせて単独で食べていたのですが、同じく宿泊している皆さんの食べ方を見ると、どうも違っていました。ほぼ皆、丸いパンをナイフで横に切って、そこにハムとチーズをはさんで食べていることがわかりました。2日目からは、私も真似して同じように食べていました。ホテルの朝食ですから、しかたないのですが、日本人の私にすると、毎日完璧に同じメニューには食文化というものは感じませんでした。

 昼食は大学で食べていましたので、別途紹介することにして、夕食は自分で用意する必要がありましたので、ホテルの近所にあるスーパーで食材を買って部屋のキッチンで調理していました。調理とはいっても、毎日ほぼ同じ内容になっていました。あいにくお米がなかったので、主食は朝食と同じようなパンです。メインは、牛肉や冷凍された魚でした。魚はそんなに種類はなかったのですが、サーモンやカジキマグロなどはありました。調理方法はほぼ同じで、プライパンを使ってオリーブオイルで焼くだけです。牛肉は塩と胡椒、それから醤油は売っていましたので、魚は醤油で味付けしました。あと、野菜は結構売っていましたので、サラダとして、こちらもオリーブオイルと塩だけで味付けして食べました。毎日在り来たりのメニューでしたが、一つだけ、ヨーロッパならではの、日本ではなかなか味わえないものがありました。それはワインです。私は赤ワインが好きで、毎週末に飲んでいます。赤ワインといっても、スーパーで売っている千円前後の安いワインです。日本でも、2千円程度出すと、デパートでもそこそこのワインは手に入れることはできますが、ミュンヘンのスーパーで売っていた同等のワインは、フランスボルドー産のテーブルワインでも、4ユーロ程度の値段でした。あまりの安さにハマってしまい、結局ほぼ毎日夕食で赤ワインを飲んでいたのを記憶しています。